■ 肩関節周囲炎とは
肩関節周囲炎は、一般的には「明確な感染や外傷等の原因がなく、肩関節の疼痛や運動制限を主徴とする様々な病態を含む症候群」と捉える場合が多く、病態が明確になった場合は具体的な疾患名を用います。
■ 肩関節周囲炎の成因
不明な点が多く、肩周辺の軟部組織の退行性変化に微細な外傷が加わって発症すると考えられています。
■ 肩関節周囲炎の分類と経過
肩関節周囲炎は下の表に示すような複数の疾患を含んでいます。
①腱板炎 ②肩峰下滑液包炎 ③石灰沈着性腱板炎 ④腱板不全断裂 ⑤上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎 ⑥いわゆる五十肩 ⑦烏口突起炎 ⑧腱板疎部炎 ⑨その他 (上記の疾患については肩関節痛の項を参照) |
まず腱板滑動機構、長頭腱滑動機構、腱板疎部などの障害が起こり、これらの炎症が治癒せずに増悪・遷延化すると癒着性の滑液包炎や関節包炎となり関節拘縮を生じます。この時期は疼痛が増強して自発痛を認めることが多く、「いわゆる五十肩」といわれるのはこの状態にあたります。拘縮の有無から病期を拘縮のない freezing phase と拘縮のある frozen phase に分類します。予後は良好で6ヶ月〜24ヶ月程度で治癒するとされていますが、長期経過観察例から日常生活に支障のない程度の機能障害が残る例も少なくないことが報告されています。
■ 現代医学的治療
肩関節周囲炎の治療は、薬物療法、注射療法、各種理学療法などの保存療法が中心です。
■ 鍼灸治療
1. 現代医学的な鍼灸治療
① 疼痛や筋の過緊張を軽減し、症状の緩和をはかります。
② 運動療法と併用して肩周囲筋の機能を改善して可動域の拡大や肩甲骨の運動の正常化をはかります。