五臓六腑(ごぞうろっぷ)

■ 五臓

 心・肝・脾・肺・腎の5つの臓器の総称。
 中医学の見方では、五臓とは解剖学において確かめられる実質器官を指すだけでなく、その果たす機能とそこに現れる病理変化によって識別される概念のことになります。例えば心臓とは解剖学的な心臓のみならず、循環系統、精神・思惟などの活動、血液系統、およびその他の生理機能を含む広い概念として把握されます。臓象ぞうしょう学説によれば、五臓とは人体の生命活動の中心であり、精神や意識の活動は五臓に帰属するものとみなされ、五臓に六腑が協力することによって人体の各組織器官は繋がれ、1個の統一された総体が構成されると考えられています。

■ 六腑

 胆・胃・大腸・小腸・膀胱・三焦さんしょうの6つの器官の総称。
 「腑」の多くは胸腹腔中にある中空の器官を指し、そのうち三焦は独立した器官としてとらえられるものではなく、胸腹腔の上・中・下3つの位置において独特の作用を及ぼす「機能」としてとらえられています。六腑の機能は水穀(飲食物)の収納と消化であり、精微せいびと呼ばれる栄養物質を吸収して糟粕そうはくを排泄します。
 中医学では六腑について、形態をもった臓器というより、一定の役割を担う「機能」としての位置付けを強調しています。例えば胆は肝葉の下にあり胆汁を貯蔵しますが、それは水穀の消化機能を助ける機能をもつだけでなく、決断などの意志の働きをも主り、精神活動とも関係します。そうした六腑の機能が発揮されるためには、五臓から供給される精気の働きが必要となり、また五臓が貯蔵する精気は六腑が伝化する水穀を源としています。つまり、一臓一腑が互いに呼応して性状な生理機能を保持しているのです。