頚椎症

■ 頚椎症とは

 頚椎症は頚部脊椎症、頚椎骨軟骨症、頚椎骨関節症などともいわれ、中高年者に多くみられる疾患です。頸椎椎間板の退行性変化が基盤となって、周囲の組織(骨組織、靭帯、筋)に影響を及ぼし、周囲組織自体の退行性変化が加わった結果、脊髄、神経根、交感神経を刺激・圧迫して種々の症状を呈するとされています。

■ 頚椎症の成因

 頚椎の椎間板が老化して、頚椎間の狭小化が生じたり、骨棘が形成されたり、頚椎の並びが滑らかでなくズレが生じたりすると、周囲の靭帯や筋肉が過緊張を起こします。そして、近傍にある神経を刺激、圧迫して、手指の痛みやしびれを生じさせます。

■ 頚椎症の分類

 関連痛型(局所症状型)神経根型脊髄型バレー症状型に分類されます。

① 関連痛型(局所症状型)

 関連痛型は肩こりや項部の重だるさ・疼痛、肩甲間部痛が主たる症状で、頸部の後屈や側屈で頸の付け根や肩甲間部に放散痛が生じます。手指の痛みやしびれは生じません
 日常生活や社会生活に大きな支障をきたすことは少ないですが、頸を動かした時に重だるさや痛みが生じるため何ともいえない不快感を自覚します。例えば、頸を後屈した状態になるパソコン作業などをしているとたちまち症状が出現してきます。軽度なものは肩こり程度ですが、頸の可動域が悪くなったり、肩甲間部への放散痛がみられてくると、生活に支障をきたしてきます。

② 神経根型

 神経根型では頸の動きにより上肢に放散する痛みやしびれが出現します。ほとんどは頸肩部痛で発症し、約1ヶ月程で上肢痛やしびれが出現します。頸の後屈や側屈で頸から指先にかけて電撃様の痛みやしびれが出現するのが特徴です。関連痛型に比べて症状はかなりつらいものがあります。

③ 脊髄型

 関連痛型、神経根型に比べると発生頻度は少ないですが、症状は重篤です。脊髄の圧迫による症状が出現し、しびれはやがて両側性となり、上肢ののだるさや指先のこわばり、脱力感が生じ、衣服のボタンをはめる、箸を使う、書字などが困難となる巧緻障害がみられます。さらにひどくなると、痙性歩行障害膀胱直腸障害も出現してきます。

④ バレー症状型

 後頭部痛、頭部回旋時に発作性に生じるめまい、耳鳴り、視力障害、嗄声、一過性の失声、頸部深部の不快感、易疲労性などがあります。頚椎の棘突起が頸部交感神経を刺激すること、あるいは椎骨動脈の病変によりおこるとされています。交通事故によるむち打ち損傷などの既往を持つ場合が多いです。

■ 鍼灸治療

 関連痛型や神経根型では鍼灸の良い適応となります。頚椎症の患者は、頸や肩の筋緊張がみられ、頸の動きが制限されています。鍼灸治療は筋の異常亢進を改善し、循環を良くすることで頸の動きが改善されます。これにより、刺激されている神経が緩和され症状が改善します。関連痛型や神経根型では、椎間関節や椎間孔付近で病的状態を改善させることで、症状の軽快に至るものと考えられています。

 一方、脊髄型の中枢神経障害の症状に対しては鍼灸の効果は期待できません