陰陽(いんよう)

■ 陰陽とは

 陰陽学説では、あらゆる事物じぶつはすべて陰と陽の相互に対立する2つの面を含んでいると考えます。

 活動的なもの・外在するもの・上昇するもの・温熱的なもの・明るいもの・機能的なもの・機能の亢進しているものは、すべてに属します。
 反対に、落ち着いていて静かなもの・内在的なもの・下降するもの・寒冷なもの・暗いもの・物質的なもの・機能が減退しているものは、すべてに属します。

東洋医学では、人体に対して推動すいどう温煦おんく作用をもつ気を「」と称し、栄養・滋潤じじゅん作用をもつ気を「」と称します。人体の活動状態や病変の趨勢すうせいについても、次の表のように陰陽で区別します。

 陽 証ようしょう陰 証いんしょう
1代謝・生理的機能の亢進傾向代謝・生理的機能の低下傾向
2基礎代謝がやや高い基礎代謝が低い
3体温が高い傾向体温が低い傾向
4発汗が多い発汗が少ない
5血圧が高い傾向血圧が低い傾向
6胃の動きが活発である胃の動きが不活発である
7交感神経緊張型迷走神経緊張型
8暑がりである冷えやすい
9顔面紅潮顔面蒼白
10冷たい水・食事を好む温かい飲み物・食事を好む
11舌は乾燥し、口渇がある舌は潤い、口渇がない
12小便は黄色小便は清澄
13唾は普通量である唾は多い
14便秘傾向である下痢しやすい

また、陰陽には以下の関係があります。

■ 陰と陽の関係

1 陰陽の依存いぞん関係

 陰と陽はそれぞれ単独で存在することはできず、相手の存在を自身の存在の拠り所としています。
 例えば、上は陽で下は陰ですが上がなければ下は存在せず、同様に下がなければ上を論じることができません。また熱は陽で寒は陰ですが熱がなければ寒もなく、寒がなければ熱を論じることができません。

2 陰陽の対立たいりつ制約せいやく関係

 陰と陽は互いに依存しあっているだけでなく、互いに対立もしています。このような対立関係は、相互制約の関係として現れます。
 制約とは陰陽のどちらも他の一方を牽制し制約する作用と力を持ち、相手と自身とを常に動態的バランスのとれた状態にしているということです。このような関係により陰は陽の亢進を制約し、陽は陰の行き過ぎを制約し、陰陽のかたよった盛衰せいすいを矯正しています。
 陰陽の互いの行き過ぎが制約された動態的なバランスのとれた状態、これがすなわち健康状態なのです

3 陰陽の消長しょうちょう転化てんか関係

 気候の変化を例にとると、夏は暑さが極度に達し、夏至になると陰気が生じはじめ、寒の生気を帯びはじめます。秋分に至ると熱気がしだいに衰え、冬の寒さに変わってきます。この寒さが極度に達し冬至になると、陽気が生じはじめ、熱の生気を帯び、春分になると寒気はしだいに衰え、再び夏の暑さにもどります。この夏から秋・冬までは「陽消陰長ようしょういんちょう」の過程で、冬から春・夏までは「陰消陽長いんしょうようちょう」の過程です。これを陰陽の消長といいます。
 陰陽は一定の程度はまたは一定の段階に達すると、それぞれ相反する方向へと転化することができます。一般的には、陰陽の一方の状態が最高度に達したときに、他方に転化する可能性が生じます。これを陰陽の転化といいます。

以上が陰陽学説の基本的内容となっています。