補瀉(ほしゃ)

 「」と「しゃ」は、鍼灸治療における2つの治療原則です。
 「補」は充たすの意味で、人体の不足を補うことであり、主に虚証の治療に用います。「瀉」は取り除くの意味で、人体の過盛かせいを取り除くことであり、主に実証の治療に用います。

 鍼灸の補瀉作用は、種々の刺鍼ししん手技を用いて、異なる刺激強度や特徴を生み出すことによって得られます。
 具体的な補瀉手技には数多くの種類がありますが、臨床では、迎随げいずい補瀉1提挿ていそう補瀉2徐疾じょしつ補瀉3捻転ねんてん補瀉4開闔かいこう補瀉5・呼吸補瀉6平補平瀉へいほへいしゃ7などがよく用いられます。

  1. 鍼尖の向きを経脈の循行方向と同方向にするか逆方向にするかによって補瀉を区別する方法。 ↩︎
  2. 鍼を刺入して鍼感を得た後、上下させる速さや、力の入れ方を変えることによって補瀉を区別する方法。 ↩︎
  3. 鍼の刺入と抜出の速さの違いによって、補瀉を区別する方法。 ↩︎
  4. 鍼を刺入して鍼感を得た後、捻転の角度・速度・用いる力の強さなどを変えることによって補瀉を区別する方法。 ↩︎
  5. 鍼を抜いた後、鍼孔を開いたままにしておくか閉じておくかによって補瀉を区別する方法。 ↩︎
  6. 鍼の刺入および抜鍼と、患者の呼吸との合わせ方を変えることによって補瀉を区別する方法。 ↩︎
  7. 平とは平均の意で、上記の補瀉に偏らない平均的な方法。 ↩︎