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  2. 気(き)

 中国古代哲学の根幹をなすのは「気の思想」で、気は東洋医学においても重要な用語として用いられている。

気の種類とその生成過程

人体における気は、分布部位の違いとその来源や機能の違いにより、原気・宗気・営気・衛気などの名称がつけられている。

1 原気げんき

原気は「元気」「真気」ともいわれ、最も重要で基本的な気である。

原気は主として先天の精せんてんのせい1が変化して生じたものだが、出生後は飲食物の栄養物質によって継続的に滋養、補充されている。

原気が充足すればするほど、臓腑・組織のはたらきは活発になり、身体の健康は保たれて、病を受けつけにくくなる

慢性病によって消耗すると原気の作用は衰え、種々の疾病を生じる原因となる。

2 宗気そうき

宗気は、肺に吸入される清気せいき2と脾胃の運化うんか作用によって生成される水穀の気3とが結合することによって生産され、胸中きょうちゅうに集められる。

宗気には、肺の呼吸作用と心血の運行を促進する機能がある。

宗気が不足すると、呼吸が浅く短くなり声音も低く力感がなくなる。

ひどくなると血脈けつみゃく凝滞ぎょうたいや身体の動作に力が入らないといった症状があらわれる。

3 営気えいき

営気は、脾胃で作られる飲食物の栄養物質から作られたもので、栄養分を多くもっている。

営気は血脈中に分布していて、血液の一部分として循環することによって全身に栄養を供給している。

4 衛気えき

衛気は、水穀の気が変化してできたもので、活動性が高く、動きが速い性質がある。

経脈けいみゃくがいをめぐり、全身に分布している。

衛気には、肌表きひょうを保護して外邪がいじゃの侵入に抵抗する、汗腺を開閉し体温調節をはかる、臓腑を温める、皮毛ひもうを潤すなどの機能がある。

気が体内で充分に生成されるか否かは、先天の精気の充足度、飲食物の栄養の多少、肺・脾・腎の機能が正常か否かにかかっており、なかでも脾胃の機能が最も重要と考えられている。

気の作用

気は人体に対して重要な作用をおよぼしていて、さまざまな部位に分布している。

次の5つの作用にまとめられる。

1 推動すいどう作用

推動とは促進の意。

人体の生長・発育、各臓腑・経絡の生理活動、循行じゅんこう津液しんえき輸布ゆふはすべて気によって促進されており、気虚ききょとなり推動作用が減退すると、生長・発育の遅れ、臓腑・経脈の機能減退、血行の停滞、水液の停留などの病変が現れる。

2 温煦おんく作用

全身や各組織を温める作用で、人体が正常な体温を維持することができるのは、気の温煦作用の調節を受けているからである。

気の温煦作用が減退すると、異常なほど寒がりになったり、四肢の冷えなどが現れる。

3 防御ぼうぎょ作用

気には肌表を保護し、外邪の侵入を防ぐ作用がある。

外邪がすでに人体に侵入してしまった場合、気はこの病邪と闘って外へ追い出し、健康を回復させるように働く。

4 固摂こせつ作用

体液が漏出ろうしゅつするのを防ぐ作用で、血液が脈管の外にあふれないように制御する働き、汗や尿の排出をコントロールするはたらき、あるいは精液を漏出させないようにするはたらきなどを指している。

5 気化きか作用

気化には生成と、尿・汗などの物質の産生と代謝に関与する作用の意味がある。

気の運行

気の運動の基本形式はしょうこうしゅつにゅうの4種であり、人体の生命活動をシンボリックに表現したものである。

臓腑の気の昇降出入が相対的にバランス良く行われていれば、正常な生理作用を維持することができる。

ところが、気の運行にとどこおりが生じたり、乱れて逆行したり、昇降出入がうまく行われなくなったりすると、種々の病変を引き起こす

  1. 父母から授かり腎中に蔵される先天の気のこと。 ↩︎
  2. 自然界に存在し、肺を経て体内に吸入されるもの。 ↩︎
  3. 飲食物を消化吸収して作られた気のこと。 ↩︎