■ 本態性高血圧とは
本態性高血圧とは、正常より高い血圧値を示し、その原因が明確でないものをいいます。生活習慣病のひとつで、薬物両方は大変進歩しているものの、運動療法や食事療法も重要視されており、鍼灸臨床においても本症への治療が期待されています。
■ 本態性高血圧の成因
本態性高血圧は、高血圧全体の約90%を占めます。本態性高血圧の成因は明確ではなく、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合って高血圧が発症すると考えられています。
遺伝的要因では、複数の遺伝子が関係しているとされていますが、原因となる遺伝子は同定されていません。
環境的要因は、食塩、肥満、運動不足、ストレス、飲酒、喫煙などです。
■ 本態性高血圧の治療
1. 現代医学的な治療
( 1 ) 非薬物療法
①食塩制限:高血圧患者においては1日6g以下の制限が勧められている。
②体重コントロール:肥満は高血圧の発生に大きく関与しており、糖尿病などの生活習慣病との関わりも大きい。BMI 25未満を目標に指導される。
③運動:軽症高血圧では、数ヶ月の運動で降圧が得られることが示されている。強度の有酸素運動を定期的に行うことが勧められている。
④アルコール制限:男性では日本酒であれば1合、ビールでは中ビン1本、ウイスキー・ブランデーではダブル1杯、ワインでは2杯弱、焼酎は半分弱がよい。
⑤その他:ストレスの解消、禁煙などが降圧につながる。
( 2 ) 薬物療法
高血圧治療ガイドラインでは、第1選択薬は利尿薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の5種類が推奨されている。投薬方法は低用量から開始され、降圧効果が不十分であれば作用機序の異なる薬剤にするか、増量がなされる。
2. 鍼灸治療
1) 治療対象
鍼灸治療の適応はあくまでも、本態性高血圧と診断された場合になります。
2) 現代医学的な鍼灸治療
頸部から肩および背部に出現する反応点を治療点として施術します。
末梢血管抵抗の改善や自律神経機能の調整作用を目的とするものです。特に様々な身体的、精神的自覚症状は悪玉ストレスとして作用して血圧を上昇させる因子になることから、これらの症状の緩和をはかることは血圧調整に効果的に作用します。
3) 東洋医学的な鍼灸治療
東洋医学的には、高血圧という概念はありませんが、①精神的ストレス、②水液の滞り、③陰気の不足などの弁証を立てて、治療を行います。