■ 高血圧とは

 高血圧は、血圧が正常値を超えた状態をいいます。血圧は運動や感情などによっても変化するため、高血圧と判断するには正しい血圧測定が重要です。また、高血圧は高齢者に多く、そのまま放置すると、動脈硬化をきたし、心疾患、脳血管障害のリスクファクターとなります。

■ 高血圧をきたす主な疾患の病態と症状の特徴

1. 本態性高血圧

 本態性高血圧は、血圧が高血圧域にあり、その原因が明確でないものをいいます。

2. 二次性高血圧

 血圧調節に関与する多くの臓器(心臓、腎臓、内分泌腺など)、組織(中枢神経、末梢交感神経、血管平滑筋など)があり、それらの障害により高血圧が生じてくるものをいいます。

1) 腎性

 腎臓には、①体液量の維持調節による血圧の調節、②レニン・アンギオテンシン系1という昇圧系による血圧調整、③カリクレイン–キニン系2という降圧系による血圧調整があります。

①腎実質性
 腎実質の障害による高血圧であり、主としてナトリウムや水の排泄障害が関与します。糸球体腎炎、腎盂腎炎、糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎、妊娠高血圧症候群などの腎疾患により高血圧をきたします。

②腎血管性
 腎動脈の病変(狭窄、閉塞、動脈瘤など)によるもので、レニン分泌亢進が関与します。

2) 内分泌性

①原発性アルドステロン症
 副腎皮質の腺腫などによりアルドステロンの過剰分泌が生じ、高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、低レニン血症が生じます。

②クッシング症候群
 副腎皮質の腺腫、癌、過形成、あるいは下垂体腺腫などによる副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の過剰分泌により高血圧、中心性肥満、多毛、骨粗鬆症などをきたします。

③褐色細胞腫
 副腎皮質や交感神経節の腫瘍により、高血圧、耐糖能異常、代謝亢進、起立性低血圧症などをきたします。

3) 血管性

 大動脈炎症候群の慢性期に血管狭窄・閉塞による血流障害、大動脈弁閉鎖不全、高血圧をきたします。

4) 薬物誘導性

 ステロイド、甘草、エストロゲン、非ステロイド性抗炎症薬などの薬物により高血圧をきたします。

■ 鍼灸治療

 鍼灸治療の対象は、本態性高血圧です。また、二次性高血圧は原則として不適となります。

  1. 腎臓から分泌されるレニンは、肝臓で合成され血中に分泌されるアンギオテンシノゲンに作用してアンギオテンシンⅠを生成し、これがアンギオテンシン変換酵素によりアンギオテンシンⅡに変化する。アンギオテンシンⅡは強力な末梢血管収縮作用を有し、血圧を上昇させる。なお、アンギオテンシンⅡの血中濃度は、レニン分泌量に依存する。 ↩︎
  2. 腎において産生され、末梢血管を拡張させるとともに腎尿細管においてはNaCl再吸収抑制、利尿性に作用し、血圧を低下させる。なお、カリクレインは遠位尿細管の接合尿細管細胞で産生され、キニノゲンに作用して生理活性物質であるキニンを遊離する。キニンは、血圧の低下や血管拡張作用などの作用を有する。 ↩︎