血(けつ)

 血は脈管内の赤い液体で、人体の各臓腑・組織・器官を栄養します。人体にとって不可欠な栄養物質です。

① 血の生成

 飲食物は胃に入り、脾で吸収・運化されることによって水穀の精微すいこくのせいびに変化します。血は水穀の精微営気えいき精髄せいずいを基礎物質として、脾胃・肺・心(脈)・腎・肝などの臓器の機能により生成されています。

② 血の作用

 血は全身の組織・器官に栄養分を供給し、滋潤じじゅんするようにはたらいています。血によって眼が滋養されれば物をよく見ることができ、足が滋養されれば正常に歩くことができ、てのひらが滋養されれば物をしっかりと握ることができ、指が滋養されればしっかりとつまむことができます。
 また、血の滋養を得ることで筋骨は強くたくましくなり、関節はスムーズに動きます。血が不足して充分に栄養が供給されなくなると、眼は乾いて動かしにくくなり、視力は減退し、関節の動きが悪くなり四肢のしびれ・皮膚の乾燥やかゆみなどの症状が現れます。
 さらに、血は精神意識活動の基礎物質であり、気血が充足していれば、意識は明瞭で精神活動も充実します。血が不足すると、驚悸きょうき・不眠・多夢など精神の病変が現れます。

③ 血の循行じゅんこう

 血液の循行は気の推動すいどう作用が原動力となっています。また、全身を循行している血脈はすべてに集まり、肺気の作用を受けた後、ふたたび全身に散布されます。血液の循行は肺のほかに、気の統摂とうせつ1蔵血ぞうけつ2作用・疏泄そせつ3作用によっても調節されています。

  1. 血液が脈管外に漏れ出ないようにする作用のこと。 ↩︎
  2. 血液を蓄え、必要に応じてその蓄えを放出する作用のこと。 ↩︎
  3. 気を全身に巡らせる作用のこと。 ↩︎