■ 腰椎椎間板ヘルニアとは
椎間板は上下椎骨1の椎体と下位椎骨の椎体の間に介在し、圧力を弾力的に受けとめるクッションとして働きます。椎間板は外周をとりまく線維輪と、軟らかいゼリー状の髄核からなっています。髄核が周囲を取り囲んでいる線維輪を突破して、本来の位置から周囲へ向かって突出した状態を椎間板ヘルニアといいます。
本疾患の発生は男性に多く、好発年齢は20~40歳台で、発生部位はL4/L52、L5/S1椎間板の順に多く、次いでL3/L4椎間板といわれています。
■ 椎間板ヘルニアの成因
椎間板ヘルニアは、基本的には椎間板の変性を基盤として出現すると考えられています。変性椎間板に反復する負荷が加わり、椎間板の外周である線維輪に亀裂が生じ、亀裂を通じて髄核が移動して椎間板ヘルニアが形成されます。椎間板ヘルニアの好発年齢が20~40歳というのは、椎間板の変性が存在し、しかも椎間板内圧が高く、活動性の高い年齢層であることが原因と考えられています。
■ 椎間板ヘルニアの診察
1. 症状
一般に腰痛および片側性の下肢放散痛、下肢支配領域(障害神経根の支配領域)の知覚・運動障害があげられます。下肢の症状は、突出した髄核が神経根3を圧迫することにより現れます。
2. 臨床所見
鍼灸師が行える臨床所見として以下の確認を行います。
・下肢伸展挙上テスト(SRLテスト)
・下肢筋力
・知覚検査
・深部腱反射
・大腿神経伸展テスト(FNSテスト)
・圧痛
ヘルニア 高位 | 障害 神経根 | 知覚異常 | 反射減弱・消失 | 筋力低下 |
---|---|---|---|---|
L3/L4 | L4 | 下腿内側 | 膝蓋腱反射 | 大腿四頭筋、足関節背屈筋 |
L4/L5 | L5 | 足背、下腿前外側 | 正常 | 足関節・足趾背屈筋、母趾背屈屈筋 |
L5/S1 | S1 | 足底、下腿後側、足部外側 | アキレス腱反射 | 下腿三頭筋、足関節外反筋、母趾底屈筋 |
■ 鍼灸治療
椎間板ヘルニアによる症状の大多数は、手術的治療に移行することなく、保存療法で緩解します。よって、当院では急性期での施術は行いません。急性期を過ぎた椎間板ヘルニアの諸症状に対しては、様子を見ながら積極的に鍼灸治療を行います。