■ 手関節痛とは
手関節痛とは、主に手関節部の痛みで、頚椎や肘関節部由来の放散痛、中枢神経性の痛みや運動障害のケースも存在します。
■ 手関節痛をきたす主な疾患の病態と症状の特徴
手関節痛をきたす疾患は多数あり、このうち鍼灸の臨床でよく遭遇するのは、狭窄性腱鞘炎1、手根管症候群、尺骨神経管症候群、関節リウマチなどです。
1. ドゥ・ケルヴァン病
手の狭窄性腱鞘炎で、長母指外転筋腱と短母指外転筋腱が橈骨茎状突起を通過する部において起こる腱鞘炎です。手をよく使う50歳代(更年期)の中年女性に多いが、20〜30歳代で妊娠や出産を機会に発症する例もあり、ホルモンとの関連も原因の1つとして考えられています。男性1に対し女性は6〜7の割合で発症しています。
2. 手根管症候群
絞扼性神経障害の中で最も頻度が高く、手根管部における屈筋腱鞘炎による正中神経の圧迫で、男性1に対して女性7〜8の割合で発症しています。40〜50歳代の中年の女性で手のしびれを訴え、夜間、特に早朝に症状が増強すればまず本症が疑われます。屈筋支帯を切開する手根管開放術により、症状は激減するので、鍼灸治療で効果が乏しい場合は、整形外科の受診を勧めます。
3. 尺骨神経管症候群
ギヨン管症候群ともいい、尺骨神経が豆状骨と有鉤骨との間の尺骨神経管を通る部位で圧迫されて起こります。
4. ガングリオン
ガングリオンは手関節や手にきわめて多く発症し、手根骨関節や腱鞘に交通を持つものが多く、ヒアルロン酸含有のゼリーが入った袋、すなわち嚢胞を形成し、手関節背側中央付近が最も好発する部位になります。発症の部位により、手根管症候群や尺骨神経管症候群の原因となる場合があります。
5. 関節リウマチ
手関節における関節リウマチはよく見られ、滑膜や腱鞘の炎症・肥厚により、疼痛、腫脹、熱感、機能障害、さらに軟骨の破壊をもたらします。
■ 鍼灸治療
1. 治療対象
手関節痛をきたす疾患は多数あり、このうち鍼灸の臨床でよく遭遇するのは、狭窄性腱鞘炎、手根管症候群、尺骨神経管症候群、関節リウマチ、変形性指関節症などです。
2. 東洋医学的な鍼灸治療
四肢や関節部の症状は、東洋医学では痹証と捉えます。よって、痹証の弁証で治療を行います。
- 狭窄性腱鞘炎とは、腱鞘の退行変性や滑膜炎により腱鞘の口径が狭くなって、腱の円滑な滑走ができないために、痛みや腫脹を生じる病態をいう。代表的なものにはばね指やドゥ・ケルヴァン病がある。 ↩︎