■ 便秘とは

 便秘とは、各個人の健康時の状態に比べて排便回数が減少し、水分の乏しい硬い便を数日に一回くらい排出する状態を言います。この時に便の水分量が異常に少ないことが重要で、極端な場合には2〜3日に1回の排便でも、特に苦痛がなければ便秘といえないし、1日に2、3回の排便があっても苦痛があれば便秘といえます。

■ 便秘の分類

 便秘は原因が特定されない特発性便秘と原因が明らかな二次性便秘に分けられます。特発性便秘には生活環境の変化やストレスなどで生じる一過性単純性便秘と3つの慢性便秘に分けられます。
 この3つの慢性便秘には弛緩性便秘、痙攣性便秘および直腸性便秘があります。一方、二次性便秘は物理的な通貨障害を原因とする器質性障害によるものと、平滑筋(腸管)の収縮障害を原因とする機能性障害によるものに大別されます。(表1)

特発性便秘
 1. 一過性単純性便秘
 2. 慢性便秘

  a) 弛緩性便秘
  b) 痙攣性便秘
  c) 直腸性便秘


二次性便秘
 1. 器質性障害によるもの

  a) 大腸・直腸・肛門の障害
    腫瘍、癒着、ヘルニア、クローン病や潰瘍性大腸炎による炎症
    直腸脱、肛門脱
  b) 腸管以外の臓器障害
    腹部・骨盤内臓器の腫瘍による管外圧迫

 2. 機能性障害によるもの
  a) 内分泌・代謝性疾患
    甲状腺機能低下症、糖尿病、低カリウム血症など
  b) 腸管の神経・筋異常
    ヒルシュスプルング病、パーキンソン病、全身性進行性硬化症、皮膚筋炎
    筋ジストロフィー、脊髄損傷
  c) 薬剤性障害
    抗コリン剤、筋弛緩剤、抗精神薬、抗痙攣剤、アヘン、利尿剤
表1 便秘の分類

■ 慢性便秘について

1. 弛緩性便秘

 大腸運動の減弱によって大腸内容が停滞し、便の水分が吸収され便が硬くなり排出が遅れるもの。原因としては刺激の少ない低残渣食の摂取、高齢者や妊婦などでの腹圧の低下などがあります。

2. 痙攣性便秘

 S状結腸の緊張および蠕動運動が亢進し、内容物の移動が妨げられることによって起こります。過敏性腸症候群の便秘型によくみられ、しばしば下痢と交互に起こります。排便時には腹痛がみられ排便後には消失します。排便は毎日あっても便は兎糞便であることが特徴です。(表2)

弛緩性便秘痙攣性
便の性状硬くて太い兎糞状または軟便
粘液の排出少ない多い
腹痛なしあり
心理的因子の関与なしあり
特徴高齢者、妊婦に多い若年・壮年期に多い
表2 弛緩性便秘と痙攣性便秘の違い

3. 直腸性便秘

 便が直腸に達しても排便が起こらない場合、便意の抑制が習慣化して排便反射が減弱して起こります。

 

■ 鍼灸治療

1. 治療対象

 鍼灸治療の対象となる便秘は、慢性に経過する機能性便秘になります(弛緩性・痙攣性・直腸性便秘)。

2. 東洋医学的な鍼灸治療

 東洋医学では便秘のことを大便秘結といいます。①熱がこもっている、②冷えている、③気が滞っている、④気が不足している、⑤血が不足している、などの要因を弁証し治療を行います。