■ めまいとは

 めまいとは、安静時または運動時に自分の体と周囲空間の相互関係・位置関係が乱れていると感じ、不快感を伴った時に生じる異常知覚とされています。
 めまい症状は種々あり、天井や頭がぐるぐる回る、フワフワする、フラフラする、地震のように感じる、体が後ろへ吸い込まれる、目の前が暗くなり意識が遠くなる、まっすぐ歩けないなどの症状が含まれます。

■ めまいの分類

1. めまいの性質による分類

 めまいはその性質により、真性めまい(vertigo)と仮性めまい(dizziness)の2つに分類されます。(表1)

めまいの性質難聴の有無原因
vertigo真性めまい周囲が回る
天井が回る
立位が保てない
耳鳴、耳閉感、難聴を伴うことが多い前庭神経系の障害
dizziness仮性めまい立ちくらみ
フラフラする感じ
体が浮いた感じ
上記の症状を伴わない他の全身性因子に基づくものが多い
表1 めまいの性質による分類

2. 病変部位による分類

1) 末梢性めまい
 末梢前庭器官(耳石器、半規管)および前庭神経の障害により引き起こされます。耳鳴、難聴、耳閉感といった症状もよくみられます。めまいの起こり方は中枢神経症状がなく、暗所でめまい感が増強する特徴があります。また、悪心・嘔吐・冷汗などの自律神経症状が強くでます。

2) 中枢性めまい
 中枢前庭系、すなわち小脳・脳幹・頭頂葉野の血管障害、腫瘍などの障害により生じます。聴覚障害は伴いません。

■ めまいをきたす主な疾患の病態と症状の特徴

1. 末梢性めまいをきたす主要疾患の特徴

1) メニエール病
 突発性に回転性めまい発作をきたすと同時に、難聴、耳鳴、耳閉塞感などの蝸牛症状と悪心・嘔吐などの自律神経症状を伴います。一般に特別な誘因もなく発来し、数分ないし数時間持続します。聴力検査では高度の感音性難聴が認められ、原因は、内リンパ水腫によるとされています。

2) 突発性難聴
 突然、高度の感音性難聴をきたす原因不明の疾患です。

3) 内耳炎
 内耳における感染、炎症によって難聴、めまいをきたす疾患で、これには中耳炎、髄膜炎、ウイルス感染によるものがあります。

4) 前庭神経炎
 上気道炎に続発して突然一側性の末梢前庭障害をきたします。眼振と激しい回転性めまいをきたしますが、経過とともに改善します。

2. 中枢性めまいをきたす主要疾患の特徴

1) 脳血管障害
 脳底動脈領域の病変でめまいが発生します。椎骨脳底動脈循環不全では一過性の神経症状(意識、視力、言語、運動、知覚の障害)を伴っためまい発作をきたします。めまいは非回転性のことが多いですが、小脳の出血や梗塞では回転性めまいや頭位性めまい(頭部の一によってめまいが発生する)が生じます。

2) 脳腫瘍
 脳幹、小脳、小脳橋角部の腫瘍によって生じます。めまいは少ないですが、ふらつきがみられます。

3) 脳変性疾患
 脊髄小脳変性症ではふらつきが主体で、小脳生運動失調症状がみられます。

3. その他のめまいをきたす主要疾患の特徴

1) 起立性調節障害
 青年期や学童期に多くみられます。起立時や歩行時に失神感、眼前暗黒感などの立ちくらみ症状をきたします。耳症状、神経症状などはなく、起立時の反射性の血圧調節機能の障害によります。

2) 心因性めまい
 器質的病変が認められず、症状の再現性も認められないめまいです。

■ 鍼灸治療

1. 治療対象

 特に鍼灸治療で適応となる疾患は、メニエール病およびメニエール症候群、発作性頭位眩暈症、頸性めまいになります。不適応は中枢性めまいです。
 鍼灸治療はめまいの程度を軽減する効果があり、めまいの改善により日常生活動作(ADL)が改善され、回復が早まるものと考えられます。

2. 現代医学的な鍼灸治療

 めまい感がある時、頸部に異常緊張が必ず発生します。めまい患者では、頸肩部の緊張が増加するとめまい感が増悪すると訴えることが多いです。鍼治療はめまいによる異常筋緊張を緩和することにより平衡機能を正常にする働きがあります。

3. 東洋医学的な鍼灸治療

 東洋医学では、一般的にめまいを「眩暈げんうん」と呼んでいます。①気血の不足②水液の滞り③腎気の不足④ストレス、などの弁証をして治療を行います。